「描いて解脱」呪詛のようにつぶやき絵を描く日々
「おうよ、箱どうするんだよ。帙でもいいけど。」
「おうあ。」

箱は今ない。屏風だけ。輸送用にボロボロのダンボールとエアキャップ。

「電話しろよ。」
「だって…」
「いいから早く。こんなダンボールじゃ嫁にいけねーぞ。」
「うっ。お嫁入りできたら作るよ。」
「てめっ持って帰る時ともっかい展示する時と締まっておくのにダンボールかっ。いいから電話しろ!」
「いいよこれで。」
「ちゃんと作りな?」
「うー。」
優しく武士が諭す。
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帰りのエレベーターの中で。

「仏像しろって言われました。」
「そうか。ほら仏像だろ。もっと手を前に中に。品良く。走ってる車を止めるんじゃないんだろ?」
「うん。じゃ、さらに仏像っぽく中指をそっと前に出してみる。美しい形。」
「コイツホント減らず口だな。」
「えへ。」



















「まず材のめを見る。」
「はい」
「材の色を見る。」
「上や下のふちは目が届かないからめが悪いのをつかう。横の縁は目に入るから目のいいのをあてる。」
「はい。」
「材の一本の中でも杉だから赤みがある。それを上下のあたる縁となるべくあわせる。」
「はい。」

かきかけー。

「材は買ってきたら確認。よくないのがあったら返品。」
「はい。」
「でも新参だから、文句つけても相手からじゃ、他で探してくださいってなる場合がある。」
「はいっ。」
「そこはうまくやれ。」
「はいっ。」
「貧乏は自分で何とかするんだ。」
「貧乏暇なしだな」
「はいっ」
「貧乏だから加工してもいいけど時間がないので材をよく見ていい塩梅になるように置きます。」
「はい。」

目の悪いものは目につきにくい場所へ。
「なんでこれだけ上の面が正目じゃないんだ?」
「そですね。」
「じゃ、これは下にやります。」
「はい。」

削ります。留めはあとでキメるので先に入りの部分に来るところを加工します。のこぎりで長さをあわせて材を切ります。
「のこは使えんの?」
「はい、高校の時に木工を主とする科にいたのでできます。」
「どこ?工芸?」
「うお、ご存知で?」
「前20年ぐらいの時に工芸高校の子が来てたんだよ。そこの板、そのこが作った奴。」
「おおお。」
ちょっとおもしろい。

「材はこうやってあててやります。測りません。ちりを取って見当をつけます。」
「はい。」
「じゃ、入りのところ面取りのペーパーがけ。てが引っかからないように。」
「はい。」
「あ、」
「どうしました?」
「これ結構転んでる。寝かせてあった材なんだな。」
「おおお。」
「じゃ、さっきの目の悪い奴上で、これ下ね。」
「臨機応変。」
「留め切る前だから大丈夫。」

留めを切ったらノミで接着剤が入るところに遊びをつけます。面がツライチだと接着剤がはみ出てよくないのです。平丸ノミで浅く掘ります。鋲を打つ位置にキリでもみます。端からかっこうのいい位置に星をうち鋲の位置を決めキリでもむ。ふちの下には毛糸を。これは隙間からの光をさえぎる為です。のりを付け毛糸を固定、材を当てて鋲打ち。

これを縁の数だけやります。



「あ、切った。」
ぱたぱたと血が畳に落ちます。
「どこ?やったか?」
「あ、やりました。人差し指の付け根です。でも指は動きます。けんはきってないです。」
「おさえろっ流しに行け」
「はい、でもふらふらします。」
「ショックでそうなるの。」
「はい、歩きます。」

マリオがバンドエイドを上手に切って傷を合わせてくれます。武士は畳吹き。
「すみません。これ縫わないとダメかも。」
「けっこうきれてるな。医者だな。外科だ。ふらふらするか?」
「はい、ちょっと今は立ってるのダメかも。」
よわっちい。
バンドエイドで止血できているのを確認したら少し楽になってくる。
「はい心臓より上に手を上げて。いってらっしゃい。」
「はい。」

うーん。

「なにしてたんですか?」
「屏風の加工でノミで切りました。」
「仕事ですか?」
「仕事ではないです。趣味です。」
「仕事ではないんですね。」
「はい、趣味です。」

労災かどうかのことのようだ。

「少し深く切ったので縫う必要があるかと思い来ました。けんは切っていないと思います。」
「どうしてわかるの?」
「動きが前と変わらないからです。」
「そう。」

診断は常に医者がしたいというのは知っているけど解答を間違えなければ大丈夫。

「痛いですよ。消毒と麻酔の注射で二度痛いです。」
「はい。」
「消毒です。痛いです。」
「いたいいたいいたいーっおさるさんだから痛いが我慢できません!」
「次注射です。」
「いたいー。」
「もう痛くないでしょ?おさるさんでも大丈夫。」
「うん。痛くない。」
「これで縫っても大丈夫。」
「うん。」

さるは麻酔が効いてようやく黙る。
痛みが治まったので縫っているところを覗き見る。黒い毛が縫い付けられていくみたいだ。

「三針縫いました。」
「はい。」
「縫ったのちゃんと見る?」
「みる。みたいです。」
「はい。どうぞ。」
「あははははははは。」

黒い毛が手から生えてる。安心感とかで笑える。傷口が縫われてふてくされた口みたいにとんがっている。

「はい、じゃ、今日はお風呂入らないように。」
「はい。」
「手は仏像みたいな位置ね。」
「はい。」
「もっと中に。」
「こう?」
「そう。手使う?使いたい?」
「描くから使いたいです。」
「使いたいですかー。」
「はい。」
お医者さんは指が動けるように、使いがいいように処置をしてくれた。丁寧だ。

「丁寧にありがとうございます。」
「あ、手ひらに血がついてるね。しょうがないかなー。」
「しょうがないです。」
「うん。」
でも手ひらの血や爪に入った血まで拭ってくれた。やさしい。

「はい、じゃ質問は?」
「ないです。」
「仏像」
「ん?」
「手。」
「はい!」
「ぼく、水曜日いないから明日か午後にしてね。水曜日でもいいけど。」
「明日か木曜日に伺います。」
「うん。仏像。」
「はい。ありがとうございました。」

ふう。

戻ると屏風の縁は出来上がっていた。
「負傷者にはもうさわらせない。汚されると困るからな。さわんな。そこでみてろ。見るだけでも学習できんだろ。そばでじっと見てろ。」
「はい。」

あとは尾瀬を貼る作業。仕上げだ。
困るの。いつもこういうのが起きるから。で、それを書いてるだけなの。
でも見るだけでも勉強だ。学習をする。作るためにはどうするのかを見なくちゃわからない。

鮮やかに2人の連係プレーで尾瀬の紙が切られ丸が合い美しく尾瀬に裏紙が貼られていく。
紙兆番、屏風の裏の稼動部分が美しく仕上がる。

「なんとかできたな」
「うん。ありがとう。皆さんのおかげです。」
「ん。」

ということで目出度くできたのですが、今回写真を撮る暇がまったくありませんでしたので言葉でお送りしてみました。
とにもかくにも屏風ができる一連のものを見ることができました。学習。
これを今後に生かすにはちゃんと続けることが大事。

「早く治せよ。」
「はい。ありがとうございました。」

















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